EXHIBITION

Minouk Lim

【日時】:2018年1月10日
【場所】:倉敷芸術科学大学

E E E(川上研究室 現代アートプロジェクト)では、ソウル在住のアーティスト ミヌーク・イムによる日本初個展『もしもの約束』を開催いたします。リムは、芸術活動を執筆、音楽へと拡張しながら、韓国の急速な民主化と工業化、またその過程で生じた軋轢や疎外など、近代国家の病巣に分け入る数々のパフォーマンスや映像インスタレーションを発表してきました。

本展は、イムが参加した第10回光州ビエンナーレの機会を用い、地元メディアを巻き込み集団的記憶に介入した「From X to A」を上映いたします。

米ソ対立を背景に1950年6月25日に金日成率いる北朝鮮が中華人民共和国の毛沢東、ソビエト連邦のヨシフ・スターリンの同意と支援のもと、国境線と化していた38度線を越えて韓国に侵略を仕掛けたことによって勃発した朝鮮戦争は、韓国、朝鮮全土において甚大な被害と共に、現在まで続く分断を生みだしました。その30年後である1980年、斗煥らのクーデターと金大中の逮捕を契機として、民主化を求める学生デモが発生。市民も参加して約20万人に拡大した民衆蜂起を、軍部が武力鎮圧する流血の大惨事、光州事件に発展します。

イムは朝鮮戦争中に虐殺された民間人の3箇所の埋葬地を、光州民主化運動によって子供を失った母親で作られた、「光州5月の母の会」のメンバーと共に訪れます。そしてメンバーと共に、コンテナに入れられ、放置され行き場を失った戦時下に虐殺された民間人の遺骨を慶尚(キョンサン)と晋州(Jinju)から光州ビエンナーレ広場へと動かし、韓国の政治史における暗部に分け入ります。巨大なコンテナはTVカメラによって実況され、「葬儀行進」の模様がオンラインニュースサイトで放送されました。

イムは本作において、遺骨を眼前に突きつけて共同追悼を公に開示し、白昼のもと国家規模で行われる情報の隠蔽、遺族の盲目と闇、鎮圧され行き場を失った感情に強く言及しています。何十年もの静寂。過去を明るみにし、公に議論することの困難。政治事件に親族を失い翻弄されるた人々が、未来を約束する政治のパラドックスを端的に表しています。こうした変遷のプロセスにおいて、倫理と政治が境界を超えて浸透しあい、断ち切られた集団的、間主観的な結びつきと、損なわれた個人の主観性が、作家の導きによって再び呼び戻されていきます。

上映作品
“From X to A”韓国語 日本語字幕付き
日時 2018年1月15日(火)ー26日(金)11:00-17:00
場所 倉敷芸術科学大学 16号 館 4156室